【双葉】 「黎明っ……!」 私は黎明の名を呼びながら、 彼に駆け寄ろうとするが――。 【ハルファス】 「――おっ、と」 私を捕らえているハルファスの腕は、 逃げ出すことを許してくれない。 と、その時――。 【黎明】 「ぐっ……!」 黎明が苦しげなうめき声を上げ、 その場に膝をつきそうになる。 だが彼は最後の気力を振り絞り―― 憎悪の炎を宿した瞳でハルファスを睨みつけ、 武骸の剣先で彼を捉えた。 だがその切っ先は不安定に揺らぎ、 目の焦点も定まっていない様子だ。 【ハルファス】 「……あれを嗅がされれば、並の半綺は 昏倒してしばらく起き上がれないはずだが」 【黎明】 「彼女を……離せ。今すぐにな」 黎明は荒い呼吸を繰り返しながら、 ハルファスをきつく睨みつけて言い放つ。 【ハルファス】 「君は、私に命令する権限など 持ち合わせてはいないはずだが。 私が従うのは、ボスの命令にのみ」 ハルファスは、黎明の言葉を 歯牙にもかけない様子で言い放つが――。 【黎明】 「権限は――ある。 彼女を守るのが、僕の役目だからだ」 ふらつく足取りで…… だけど眼には鋭い光を宿しながら 黎明は決然と言い放った。 |