【双葉】 「っ――!?」 誰かに手首をつかまれ、 思い切り反対側へと引き寄せられた。 固い金属同士がぶつかる音がこだまし、 目の前で火花が爆ぜた。 ……ど、どういうことなの? 目を見開き、 何が起こったのかを確かめると――。 【双葉】 「れ、黎明!?」 目の前に、黎明の顔があった。 彼の持つ細剣の刃が、 斧の斬撃を難なく受け止めている。 戦斧の一撃を受ければ、華奢な細剣などすぐに 折れてしまうはずだが――そういった物理法則は、 武骸には当てはまらないようだった。 【黎明】 「……何とか、間に合ったようですね」 僅かに息を切らせながら、 黎明は安堵したように呟いた。 【双葉】 「ど、どうしてあなたがここに……?」 見慣れた端正な横顔を目にしても―― 私はまだ、黎明に助けられたってことを 認識できずにいた。 だけど私を抱き寄せている力強い腕の感触は、 夢でも幻でもなく、現実のもので……。 【黎明】 「午後、あなたが勝手に早退したと知って 今までずっと探していたんです」 黎明の声音に、 私を非難するような響きが混じる。 だけど、こちらを見ないまま 彼は私の前に立ちはだかり――。 【黎明】 「あなたは、下がっていてください。 話の続きは、彼を倒してからにします」 【双葉】 「だ、だけど――」 【黎明】 「下がってください、というのが聞こえないのですか」 冷静な言葉に威圧感を込め、 再びそう言い聞かせてくる。 |