【双葉】
「あっ――!」

唐突に顎をつかまれ、
無理矢理顔を上げさせられる。

倣岸な光をたたえた瞳が、
私の顔を真っ直ぐに見つめてきた。

まるで品定めでもするみたいな
不躾な視線で、私を射すくめながら――。

【ジン】
「……ふん、なるほど」

そう呟く唇が、わずかに綻んだ。

私を屈服させることで、『フライコール』をも
その手中に収めたつもりでいるのだろうか。

彼に他意はないのだろうけど……
その無遠慮な目つきには、苛立ちを覚える。

だけど、目をそらしたら
敗北を認めるようで癪だったから――
私は真っ直ぐに彼を睨み返す。

……あれっ?

その時、ふと違和感を覚えた。

少し離れた所からじゃ分からなかったけど、
この人、もしかして――。

そう思った瞬間、
顎にかかっていた手が唐突に離れる。
そして……。

【ジン】
「……その娘は、実験棟の
 空き部屋にでも閉じ込めておくことにするか。
 時期が来るまでな」