【渉】
「……お前まで、オレを役立たず扱いすんのか」

震える眼差しが、私へと注がれる。

不安、恐怖、悲しみ、嘆き……
彼の反応は、そのどれにも当てはまるようでいて
まったく異なっているようにも見えた。

瞬きすらしないで私を見つめる瞳から、
ゆっくりと光が失せていく。

雨脚がだんだんと強まり、
傘もなく佇む私達の身体へと
容赦なく降り注いだ。

大きく見開いたままの
渉くんの瞳を目にして……私は悟る。

――彼は今、研ぎ澄まされた刃より
鋭利な言葉で胸を突き刺され、
深く絶望してるんだって。

そして、彼にこんな表情を
させてしまったのは――。

【渉】
「分かったよ!
 オレなんて、いなくなっちまえばいいんだろ!?
 2度とお前の前に、顔なんて見せねーよ!」

私が弁解の言葉を口にするよりも早く――
渉くんの慟哭と絶叫が大雨の下、響き渡った。

そして――。

渉くんは私の腕を思い切り振り払った後、
数メートル先すら目視できないほどの勢いで降り注ぐ
大雨の向こうへと走り去ってしまう。

【双葉】
「待って、渉くん!」