私達は中庭へと向かい、早速、
黎明お手製のお弁当を広げる。

【渉】
「うわーっ、わー、わー! すっげえな!
 何か、見たことねー料理ばっか並んでるぞ!
 でも、メチャクチャ美味そーじゃん!」

【渉】
「い、いーのか? これ、本当に食っちまって……。
 食った後で『やっぱり返して』なんて言ったり
 しねーだろーな?」

信じられないと言わんばかりの口ぶりで、
渉くんは尋ねてくる。

確かに黎明の料理は美味しいと思うけど……
ここまで感激するなんて、渉くん、普段
どんなものを食べてるんだろう?

ついつい、余計なことが気になってしまう。

【双葉】
「『返せ』なんて言わないってば。
 だから、好きな物から食べて」

【渉】
「よ、よし、それじゃ――」

渉くんは早速箸を取り、軽く武者震いした。
そして――。

【渉】
「んっ、むぐ、もぐもぐ、やべ、んぐぐっ、
 これ、んっ、すげえ、もぐもぐ、うめえんだけど、
 んぐ、んっ、もぐもぐ……!」

わき目も振らず、凄まじい勢いでお弁当を
かっこみ始める。

もう、咀嚼する時間すら惜しいと言わんばかりに、
ただひたすら食べて、食べて――。

【渉】
「ふぅ〜……食った食った。
 見た目だけじゃなく、量の方も絶品だったな!
 こんなもん食ったの、初めてだぞ!」

空になったお重を前に、満足そうに息をつく。

【渉】
「お前、毎日こんな豪華なメシ食ってんのか?
 正直、すっげえ羨まし……」

【渉】
「い、いや、羨ましくなんてねーぞ!
 男ってのは、質実剛健に生きるもんだしな!
 贅沢は敵だ!」